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はた迷惑。  


「不破くんは、もしあんな状況になったらどうする?」
映画館を出て、近くのファーストフードの一角を陣取った二人は自然映画の内容の話題になった。
渋沢はちょっと気になっていたのだ。
本当にそんな倫理観があって、自分たちが送り込まれたらどうするのか。
自分なら。
あの状況でみんなを助けることが出来るかとか、そんなことを考えてみて。
そうしたら不破は一体どういう行動に出るのかが気になったのだ。
今も考え込むように視線を伏せている不破は。
「・・・うむ。そうだな」
おもむろに、不破は烏龍茶のストローから口を離す。
「人選によって、それは変わるな」
「人選?」
「そうだ。まず、俺が中学3年のころの同級であの状態になったなら、俺はあるいは桐山のようにコイン等の確率で行動を選択するかもしれん」
「桐山・・・」
確かに、少しだけ不破にイメージが重なって好きになれなかった彼は、結局殺しあうことを選んだ。
1/2の確率は果たして人生を決めうる比率なのだろうか。
不破はなおも続ける。
「次に、もし桜上水の部のメンバーならば、助かる道を探す。人が作ったシステムには必ず穴があるからな。3日間もあればそれを探すことは出来るだろう」
危険はあるがな、と不破はこともなげに言った。
確かに不破ならそれも出来るかもしれない。
それだけの知識が彼にあるはずだから。
「最後に」
「ん?」
伏せていた視線が上がっていたことに気づいた。
「もしそのメンバーにお前が含まれていた場合」
「・・・俺が?」
まさか自分と、という対象を持ってこられると思わなかった渋沢は、気づかれない様に息を呑んだ。
「最初にお前を探し出し、他がどんな対象であれ殺し合いに参加する」
「・・・!」
それはどういうことだろうか。自分と殺し合いがしたいのか。そこまで嫌われていたのだろうか。
ぐるぐると駆け巡る恐怖にも似た感情はどうやら表に出なかったらしい。
不破は渋沢を見つめたまま言葉を続けた。
「お前はきっと俺を待っているだろうから、見つけ出すのは簡単だろう。お前の行動を把握した上で他の全員を殺す。そして最終放送で二人になったことを確認したら自分を何らかの形で殺す」
「・・・え?」
「お前を生き残らせる一番確実な方法だ。ルールに逆らわないからお前は政府に追われることも無い」
「・・・・・・」
「俺にはお前を守るくらいの力はあるぞ?」
何を心配していると思ったのか、見当違いのことを言ってくる不破に、渋沢は頭を抱えながらも笑みを隠せない。
「駄目だよ不破くん」
「何故だ?」
「それじゃあその年のプログラムは優勝者無しになってしまうから」
不破にそんなことをさせておいて、自分一人で生き残ることなど出来ないと思う。
それが解った時点で、自分も首の爆弾を作動させるだろう。
誰も残らない。
それでもいいと思う。
「お前は自分が生き延びたくないのか?」
不思議そうに首をかしげる、自分の検証の根本的過ちが解っていない不破に、渋沢はどうやって説明と自分の気持ちを伝えようか、不謹慎にも幸せに笑みを浮かべたのだった。



END This Edition : 20010523








二人が映画を見に行った設定で。

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