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Summer  


降り注ぐ日差しは不思議な感覚だった。
自分にとっての夏は、まるで宇宙から見た地球のようなもので。
丸いと証明されていても、自分でそれを見定めることは、まず不可能なもの。
もちろん手だてはあったとしても、並大抵のことではなく。
夏も。
ガラス張りの箱庭の中では、存在は知っていても感じることはない、そんなもので。
だから、こうやって。
日差しを感じて、風を感じて。
眩しさに目を細めて立つ自分が、とてつもなく不思議なもののように感じて。
ポケットから手を出せば、うっすらとにじんだ汗が手のひらを覆い。
それを確認して微かな笑みを浮かべると、そのグラウンドに足を向ける。
「・・・?どうした?お前がここに来るとは珍しい」
声を掛ける前に気付いた目的の人物は、練習中にも関わらず駆け寄ってきた。
「通りかかった」
遠巻きに自分たちを眺める部員たちも気にせず、汗ばんだ額から髪を掻き揚げてやり。
「これから付き合ってくれるか」
「・・・ふむ。少し待て」
校舎の時計を振り仰ぎ終了時刻を確認すると、一旦自分の元を離れ、どうやら部を取りまとめる役割らしい人物に申告している。
目で追っていると、一度だけ会ったことのある「仲間」とやらが会釈をしてきた。
「許可が出た。一度着替えに行く」
「ついて行こう」
ほんの少しだけ低くなってしまった肩を並べながら空を見上げると、太陽光が目に刺さる。
「暑いな」
「そうだな」
言わんとしていることはきっと解っている。
「新しい、発見だな」
「そうだな」
顔を合わせ、微かに微笑みあうと、頬に伝う汗を指でぬぐってやる。
こうやって感じられるのも、隣に並ぶ存在のおかげなのだと。
声を出さずとも解っているだろうから。
もう少し不思議な感覚に、身を委ねていたかった。
隣にいれば、地球が丸いことも確認できるのではないかと。
そんな感覚も楽しんでいたかった。


END
This Edition:200108152040




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