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サービストラック。  


「あ」
止める間もなく、不破の手はリモコンのボタンを押していた。
俺の制止に振り向いた顔は不思議そう。
「それ、そのまま待ってたらサービストラックが始まるんだよ」
肩越しにリモコンを取り上げてもう一度最後の曲を掛ける。
ラストの曲はそれなりに盛り上がる曲で。
でも俺はそれよりサービストラックの方が好きだから、早送り。
CDの細かい音が響く。
「同じ一曲なのだろう?」
「うん」
「何故そんな無駄なことをする?曲があるのなら初めから表記しておけばいい」
確かにちょっと面倒くさい気もするけど、でも。
まだしっとりとした感触の残る不破の肩に懐きながら、俺は首筋に吸い付いた。
「もう終わりって思ってたのにまだあったっていう方が嬉しくない?」
ひくりと震える背中に気を良くして脇腹を撫ぜ上げると、不破は疲れたように身を捩る。
「嬉しくない。もう終わりだと言っただろう」
「サービストラック・・・ってことじゃ駄目?」
終わりって言われてももうその気だし。
CDのサービストラックも始まったことだし。
「・・・サービスの意味を調べておけ」
不破のため息も一緒に聞きながら、不破が上を向くことで俺のサービストラックがスタートしたのだった。




END
This Edition : 200204030139










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