paradise of miniature garden -序章-






俺が彼と同室になったのは、学院に入って2年目の頃だった。
多くは無い荷物を抱えて部屋に入ると、まだいないだろうと思っていた彼は到着していて、俺は少し驚いた。
学院が始まるのはあと8日はある。大抵の学院生はまだ実家にいるだろう。
俺は今期から任せられるらしい二回生長として学内の顔合わせがあるから、郊外にある屋敷から通うよりここにいたほうが便利だと言う理由があったが、彼の家は街の中にあるはずだ。
だからてっきり、戻ってくるのはもっと先のことだろうとふんでいたのだが。

「やぁ」
扉が開いても振り向こうともしない彼に俺は声をかける。
それにも反応が無いと言うことは、気付いていてあえてなのだろう。
背を向けるように机に座り、袋から細々としたものを取り出している。
俺はその態度に怒ることもせず挨拶を続ける。
「三上だろう?今日から同室になる、し…」
「知ってんから言わなくていいぜ」
やっぱり顔を見せようとはせず、彼、三上は俺の自己紹介を遮った。
「いいからほっとけ」
次に投げつけられたのは拒絶とも取れる言葉。
俺は見えないのをいいことに肩をすくめ息をつく。


これが彼の第一印象・・・。
とは言わない。

三上は色々な意味で目立つ存在だった。
向こうに言わせれば俺のほうがそうなのかもしれないが、それでも俺の中では無視できない学院生だ。


本来貴族階級の子息子女のために創られた学院が、市井に開かれたのはそう古い話ではない。
色々建前があるらしいが、結局は私利のためなのが大きな理由なのだろう。
貴族であればほぼ無条件で入院出来るところを市井の人間が入るとなれば厳しい試験と審査がある。
それを潜り抜けてきた彼らは、それだけで注目を集めるのだ。

そんな中、同じ期に入院した三上は特に異彩を放っていた。
成績は常に上位。学院に媚びることなく、だからと言って劣等意識があるのか中々馴染もうとしない市井の学院生とだらしなくつるんでいるわけでもない。
それでいていざと言うときは好奇の目に晒される彼らの中心に位置している。

扱いづらい、と言うのが学院側の1年間での評価だ。


もしかしたらこの部屋割りの真意にも、三上は気付いているかもしれない。
だからこそ俺に対してこんな態度を取っている、と考えれば気持ちは解らないでもないからだ。
俺だって出来ればこんなことは引き受けたくなかったが。

俺は人好きすると言われている笑みを浮かべて振り向かない三上に言った。

「これからよろしくな」

放っておけと言われたにも関わらず声をかける俺を疎ましく思うかと身構えた俺に対して、三上はただ軽く手を上げただけだった。






This Edition : 200402250036




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