paradise of miniature garden -序章 2-






驚いたことに。

・・・ここで「驚いた」と言うのは彼に対して失礼だとは思うのだが、本当に驚いたのだから取り繕っても仕方がないだろう。

驚いたことに三上との共同生活は気楽なものだった。
まだ学院が始まっていないといっても、寮にいる限りはその規則に縛られる。
起床の時間、食事、外出、入浴、そして就寝の時間。
それほどまでに厳しいものではなかったが、それでも自由きままと言うわけにもいかない。

学院側から聞いていた三上はそれらを巧妙に抜け道を見つけて平気で破るような、そんな学生だった。
放っておけと本人に言われたとしても、それを更生させていくのが自分の仕事だと思っていたわけだから、多少のいざこざが起こるのも覚悟していたのだが。

会話は最小限。
俺が話しかけない限り向こうから声を出すことはない。
真正面から顔を見ることなんてこの1週間で一度もなかったのは確かでも。

こちらがうるさく言わない限りは、三上は静かに、ただ静かに部屋でくつろいでいた。

まるで俺自体存在しないかのように、マイペースにだが決められた時間は守ったまま。

昨年度1年間の最後でも、同室だった学院生とここまで気楽な空間は作りえていただろうかと自問するほど。

彼との生活は順調に過ぎていた。






「おはよう」
「・・・おぅ」

まだ半分くらいは寝ぼけているんだろう、と判断が付くようになった8日目。
今日からまた学院が始まる。
寮生もほぼ揃って、今日から本格的に俺の二回生長の仕事も始まることになる。
朝、一般学院生より早めに集合しての会議があるから、俺は三上を置いて先に学院へ向かう。
通りがかる顔見知りとも挨拶しながら構内に入り会議室へ。
中では既に教師が待っていた。
「おはようございます」
「あぁ、渋沢君。おはよう」
「皆さんは、まだ?」
教師は仰々しく肯いた。
「君にはすまないが時間より先に来てもらった」
その顔をみて、嫌な予感がした。
「どうだね、調子の程は」
何の、とは言わない。
ずるい手に俺は知らず眉を顰めた。
それは幼い頃より正しさと誠実さを叩き込まれてきた神事に従じるものとして、だと思う。
だが意味が解っていて答えないわけにもいかず、俺はその表情を保ちながら経過を報告した。
「1週間様子をみていましたが、おっしゃるようなことは」
「これからだよ。気を緩めずにいてくれ」
俺の表情をどうみたのだろうか。
教師も不愉快な様を隠しもせずそう言った。
何かがあると決め付けているのか、そう問いたくもあったが、それはノックによって阻まれる。

やはり気持ちの良いものじゃない。
俺は入ってきた他学年の回生長に挨拶しながら内心引き受けたことに臍をかんだ。

だが今更辞退するわけにもいかないだろう。
彼が不審に思うだけじゃない。
俺がやらないとなれば、この様子なら学院側は他の学生にその役割を回すはずだ。

様子を伺うだけならまだいいが。

果たしてこの選択が本当に神の教えに反していないのか判断しかねるまま。



俺は新しい期を迎えた。




This Edition : 200403090214




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