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ようやく行き当たったひとつの違和感に、渋沢は知らず一筋の汗を流す。 気のせいなんかじゃない。 覚えていないだけなんて可愛いものじゃない。 本当に、これらを写した記憶が、ない。 何度も何度も思い返してみた。 中3の春、風祭たちのいる桜上水中学と練習試合をやった。 それから大会が始まって、そのときは残念ながら桜上水と再試合をすることは叶わなかったけれど。 彼らとプライベートでも顔をつき合わすようになったのはそのあと。 いつのまにか仲良くなっていた藤代に引っ張られる形で、たまの休みに自分と三上と、時折笠井や間宮が混ざるように会っていた。 三上なんかは最初はとことん抵抗をしていた。 水野もあまりよい顔をしていなかったのは、二人の間にあった確執を考えれば仕方のないことだろうと苦笑いした。 選抜の選考合宿の前は特に三上の荒れ方がひどく、自分も藤代さえも苦労したのを覚えている。 それでも、どこか吹っ切れたのか、その後はお互いを意識しながら闘わせるサッカー論が功を奏したのか渋々ながらもそこにいるのを納得していて。 もし写真を撮るようなことがあるのなら、そのあとの話だろう。 なのに。 渋沢は自分の記憶力がそこまで悪くはないと自負している。 たかだか2年前の話だ。こんな出来事があったのなら、その経緯を考えても強烈な印象を覚えているはずだ。 覚えのない写真。 記憶にないシチュエーション。 それでも今ここに存在している写真は、絶対に捨てることのない、お気に入りの本に挿まれていて。 「一体何なんだ…?」 やっぱり忘れているだけか? だからそれは否定したはず。 それでもそんな考えが否定するごとに湧いて出て。 思い出そうとすればするほど、曖昧になる感覚に、渋沢は自分ひとりでは手におえない何かがあるような気までしてくる。 「さて、どうしよう…」 思わず呟いた言葉に、一抹の懐かしさを感じたことには、渋沢はこの際置いておくことにした。 |