第六話「誰」-後-




「誰…って…」

渋沢はようやく声を絞り出した。

指の先にはどう見ても薄紅の花しかない。
はずなのに。

「あー…俺悪いこと聞いた?」
勘違いもするだろう、3年は気まずそうに頭を掻いた。
「悪いっていうか…」
藤代も目をこすっては写真を見る。だがそこにも桜しか見えないのは表情で解った。
「悪かったな」
謝られて首を振る。

感謝さえしなくちゃならないだろう。
とんでもない手がかりをもらったのだから。

納得がいかないのか、藤代は食い入るように写真を見つめている。
「あの、センパイには…」
そして更なる手がかりを訊ねようとするが。
それに重なるように、3年を呼ぶ声が聞こえた。
「おーい、行くぞー」
「わりぃ。タイムオーバーだ」
どうやらここで待ち合わせをしていた合間の時間つぶしだったらしい。
3年はもう一度二人に謝ると、さっさと食堂を去って行った。

残されたのは謎と疑問。

「キャプテン…。どういうことでしょうね…」
「誰…って聞かれてもな…」

思えば、何故疑問に持たなかったのか。
ありえない写真だからとそこで思考を遮断せず。

撮ったことを忘れていたとしても、現実に写真があって。

風祭たちと交友があったのは実は1年にも満たない期間。

桜なんて、それこそありえないものなのに。



咲き誇る満開の桜。



これが何を意味するのか。







「……この写真を撮った記憶なんてないんだけど」
藤代はぽそりと呟いた。
「あのセンパイがなんて言おうと俺には桜しか見えないんだけど」
俯くかと思った声の震えのまま、藤代は天井を仰ぐ。

「何かを見つけなきゃいけないんだ」

「…そうだな」

最後は震えながらも力強く。
言い切った藤代に、渋沢は肯いた。



少しして顔を戻した藤代は、既に気持ちを切り替えたのか、いたずらを考える悪ガキのように笑う。
「まず作戦を練りましょうよ」
「作戦?」
「そ、テキはなかなか手ごわいみたいっすから!そうっすねぇ…、例えば…」














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