第九話「ひらひらと」




そこにはどこか懐かしい少年の顔が描かれていた。

間宮の絵の巧さは知っているから、これはそこそこに似ているのだろうと思うと。

── 彼、なのかもしれない。

渋沢は嬉しくなって目を細める。

そう、嬉しかった。
今まで欠片も思い出せなかった、思い出させてくれなかった彼が確かにそこにいる。
誰だとも、何者なのかも解らなくても。
彼が、そこに。

「あー…」

藤代が思わず、と言ったように声を上げた。
皆はどうだったんだろうと尋ねるまでも無く、表情で解る。

きっと皆も見えている。
彼の姿が。

「そうだ、こいつだ」
「何で忘れてたんだろう」
「忘れちゃいけなかったのに」

懐かしさとちょっとの苛立ちと忘れていた寂寥と。
それらを目の前にいる少年にぶつけるように。



ふと写真に目をやった。
桜が写っていた。
満開だと思っていた桜は、はらはらと散り始めていた。

ひらひらと舞い降りる桜。
動いているわけじゃないけどそれは確かに散っていた。

まるで目の前に桜があるかのように。

まるでひとつの課題をクリアしたご褒美のように。

ひらひらと。

その薄紅の奥に。



皆が凝視する。



どこか遠くでひび割れるような音がした。

桜が割れる音。

薄紅の曇りガラスが。



ぴしりと。

ひらりと。

皆の見守る中。






はじけ飛んだ。











「ふわ……?」












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