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そこにはどこか懐かしい少年の顔が描かれていた。 間宮の絵の巧さは知っているから、これはそこそこに似ているのだろうと思うと。 ── 彼、なのかもしれない。 渋沢は嬉しくなって目を細める。 そう、嬉しかった。 今まで欠片も思い出せなかった、思い出させてくれなかった彼が確かにそこにいる。 誰だとも、何者なのかも解らなくても。 彼が、そこに。 「あー…」 藤代が思わず、と言ったように声を上げた。 皆はどうだったんだろうと尋ねるまでも無く、表情で解る。 きっと皆も見えている。 彼の姿が。 「そうだ、こいつだ」 「何で忘れてたんだろう」 「忘れちゃいけなかったのに」 懐かしさとちょっとの苛立ちと忘れていた寂寥と。 それらを目の前にいる少年にぶつけるように。 ふと写真に目をやった。 桜が写っていた。 満開だと思っていた桜は、はらはらと散り始めていた。 ひらひらと舞い降りる桜。 動いているわけじゃないけどそれは確かに散っていた。 まるで目の前に桜があるかのように。 まるでひとつの課題をクリアしたご褒美のように。 ひらひらと。 その薄紅の奥に。 皆が凝視する。 どこか遠くでひび割れるような音がした。 桜が割れる音。 薄紅の曇りガラスが。 ぴしりと。 ひらりと。 皆の見守る中。 はじけ飛んだ。 「ふわ……?」 |