第十話「決断の時」




二人の声はほぼ同時だった。

「不破…」
「うん、そうだ。不破だ!」

渋沢は慌てて顔を上げた。
写真から目を離すのが正しいのかと迷いながら。

それは水野も同じようで、戸惑いながらも二人を眺めている。

「ったく…。信じらんねぇな」
一人は苦々しく。

「良かった!覚えてた!忘れてなかった!」
一人は歓喜に満ちて。

それでも自分の掴めない彼の何かを確実に気付いている二人に、渋沢は問い掛けようとして。
口を閉ざした。
ここで自分が思い出せないことを宣言するのは憚られた。

何故。
自分には。

その疑問ばかりが頭の中を巡り、だがそれを声にはしたくなかった。

水野が戸惑いのまま二人に問い掛ける。
「誰だか解った…?」
「だから不破でしょ?」
「テメェんところのGKだろうがよ」
意外そうな二人に水野は首を振る。
「駄目です。俺には思い出せない。確かに知っている顔でも、それが誰なのかなんて…」

微かに沈黙が広がる。
自分もそうだとは、やはり渋沢には言えなかった。
自分よりまず水野を…と思うのは卑怯なのかもしれなくても。
「……時間差があるのかもな」
「そうだよ。俺と三上先輩がまず思い出したんだし、これが変なのは最初っから解ってたことでしょ?」
「桜上水だってのは確かなんだからな」
言い聞かせるように呟けば先に思い出した二人も同意する。
そうであって欲しいと願いながら水野を見やれば。

悔しそうにしているのかと思えば、水野の表情はそうではなかった。
何かを諦めた顔。
その顔のままもう一度水野は首を振る。

「俺は…一抜けします」
「…え?」
「間宮の言うとおりです。これはきっと俺が関わるものじゃない」

今思い出せないから。
それが諦める理由だと言うのなら。

渋沢は知らず手を握り締めた。

「……そりゃ無理にとは言わねぇが」
「うん……これを見なきゃそのままだったものだしね」

三上が最初に引き、間宮に何か言われていたのか藤代も戸惑いながらも同意する。

「すみません。…桜上水のことで何か必要な情報があれば聞いてくれれば覚えている範囲で答えますから」
ほっと息をつき頭を下げた水野は、次に顔を上げたときには安堵した表情で。

自分はどうする?
そう渋沢は自問する。

「じゃあとりあえず…探しに行きます?」
「不破ってだけで桜上水の校区をかよ」
「動かないよりいいじゃないっすか」
「そりゃそうだが…渋沢は?」

自問していたことを問われて。
渋沢は。











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  1. 思い出せないことを黙ったまま二人と行動する
    41.2% (7票/41.2%)

  2. 思い出せないことを言った上で二人と行動する
    29.4% (5票/29.4%)

  3. 思い出せないことを黙ったまま水野と一緒に残る
    29.4% (5票/29.4%)

  4. 思い出せないことを言った上で水野と一緒に残る
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