第十二話「もう一度」






そこに書かれていたものは知らない名前…不破でもなければ他のどんな知った名前ではなかった。
「……ま、そんな甘いわきゃねぇよな……」
そう呟いた三上も、一気に思い出していた分期待していたところがあったのか落胆の色が隠せない。

静かな住宅街だ。
あまりひとつの家の前に3人もの男が立ち止まっているのも不自然な気がして、とりあえず歩いてみることにする。
念のため他の家で気になる名前がないかを確認しながら進んではみたが、これと言った収穫はなかった。

本当に静かな、どこも変わり映えのしない住宅街。
見覚えのあるところでなければ、記憶が途切れるようなことがなければ、ただ通り過ぎるだけの場所。

「最初の家がビンゴだと思ったんだけどなぁ」
藤代はまだ自分の直感に未練があるんだろう。
最初に曲がった道まで戻ってきてもまだしきりに首を傾げている。



そしてゲームは振り出しに戻る。
そう、ここにいる3人の全員が。



そんな考え方の自分に嫌気がさして、渋沢は頭を振る。

もう一度整理しよう。
何かを見落としていないか。
何か勘違いをしていないか。
思い出したと思っているのは当人だけで、まだ何か忘れていることがあるのではないか。

「なぁ…お前たちはどこまで思い出しているんだ?」
それをはっきりさせなければ次には進めない。
不破、と名前を言い当てた二人はキョトンと渋沢の顔を眺め。
「どこまでって…」
「不破って名前でしょ。顔でしょ。桜上水にいて…あれ?」
改めて列ねようとすればひどく曖昧な内容。
「その…不破が、どんな奴だったのか、何をしていたか、一緒に何をしたか。思い出したか?」
「……正直、さっきの写真を撮ったことは思い出してねぇ。ただよくつるんでいたことは……」
「そう、一緒に遊んで騒いでたってのは、うん。覚えてますよ」
名前が引き金になって思い出せているもの、思い出せていないものがある。
これなら遅れも取り戻せるかもしれない。
「やっぱり全部じゃないんだな。だったらもう少し調べ方もあるかもしれないな」

桜上水中学にいて、水野と同じ学年でGKをしていた。
家はこの辺りだと思うがはっきりはしていない。
いつもつるんでいたと言うことはそこそこには人付き合いはよかったのか?

「あー…あんまり、そんなタイプじゃなかったっすよね」
「そうそう、いつもむすっくれた顔しやがってよ」
「面白いことも言ってたような気もするけど、それは不破からじゃなくって風祭から聞いたんでしたっけ?」
渋沢はそれを聞いて慎重に彼を掠めず風祭との会話だけを思い出そうとする。
難しい作業だったが、記憶がぼやけていくところをうまくかわしていけば。
「…川に落ちたんだったか?」
「あ、そうだ!風祭そんなこと言ってた!」
思い出したキーワードがまたひとつ増える。
それが本当に彼に関わることかは解らないが、おそらく、そうなんだろう。

「じゃあ…ここで立ち止まっていても仕方がない」
「どこに動く?」
「そうっすね〜」














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